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「盗ってきて言うのもなんですけど、それ、なんすか?」
「初めて見た? これが自由へのパスポート。
偽造品だけどな。扱い方はいずれ教えてやるよ。
どうせ字も読めないんだろ?」
ぽかんとするディコンに、ルシエルは満足げに笑った。
「だからさ、使い捨てなんて言葉、もう忘れちまえよ。」
「お、俺、自由になれるんすか?」
ディコンの声が歓喜でうわずる。
「まだ喜ぶのは早い。偽造品だ。リスクはある。
あとは、お前にかけられてる懸賞金が問題だな。
これを知ってる連中がやっかいだぞ。」
「偽造品の旅券なんてなんであの屋敷に‥‥。
あんた、なんでそれを?」
「お前が今日盗みに入った屋敷は、デボンス郡の裁判所判事の家だ。
こいつは、大金を受け取れば、黒も白にする悪徳判事なんだよ。
ごく最近、近隣の領区で、移民向けに偽造旅券を大量にさばいていたある組織が摘発された。
もちろん、親組織からしたら大切な金蔓だからな、見逃してほしいと、この判事に莫大な賄賂が贈られていたはずだ。
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