第4章 いびつな双子

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「盗ってきて言うのもなんですけど、それ、なんすか?」 「初めて見た? これが自由へのパスポート。 偽造品だけどな。扱い方はいずれ教えてやるよ。 どうせ字も読めないんだろ?」 ぽかんとするディコンに、ルシエルは満足げに笑った。 「だからさ、使い捨てなんて言葉、もう忘れちまえよ。」 「お、俺、自由になれるんすか?」 ディコンの声が歓喜でうわずる。 「まだ喜ぶのは早い。偽造品だ。リスクはある。 あとは、お前にかけられてる懸賞金が問題だな。 これを知ってる連中がやっかいだぞ。」 「偽造品の旅券なんてなんであの屋敷に‥‥。 あんた、なんでそれを?」 「お前が今日盗みに入った屋敷は、デボンス郡の裁判所判事の家だ。 こいつは、大金を受け取れば、黒も白にする悪徳判事なんだよ。 ごく最近、近隣の領区で、移民向けに偽造旅券を大量にさばいていたある組織が摘発された。 もちろん、親組織からしたら大切な金蔓だからな、見逃してほしいと、この判事に莫大な賄賂が贈られていたはずだ。
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