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テンポよく言い返しながら、ディコンが思ったほどダメージを受けていない様子にルシエルはひそかに安堵する。
そして、声をおとして言い聞かせる。
「明日一日、絶対外に出るな。父親が帰ってくる。
使用人たちもいつもより忙しくなるし、俺も自由に行動できない。
とりあえず、食料と水はいつもより余計に持ってきた。これでしのげよ。
たぶん、明後日にはまた居なくなるから。」
「帰ってくるって、一緒に住んでたんじゃないんですか?」
「住んでるよ。
親父は仕事上あちこちの領区を回るから、なかなか自宅には戻れない。
こっちの領区に用事があったときに、立ち寄るくらいだ。
ついでに言えば、母親のほうも、慈善事業や奉仕活動に忙しい人でね。
遅く帰って早く出る。
しょっちゅうお仲間をうちの屋敷に泊めて、その接待に忙しい。
俺の行動は関知しない。
気をつけるのは、家庭教師のエレノアだけ。
俺のことを利用して親父の点を稼ごうとしてる。あいつだけは‥‥。」
ルシエルは端整な顔を苦々しく歪める。
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