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ナツは、必死に目を開いた。
・・・・・目を閉じたら、涙がこぼれてしまう。
ナツは、必死に口を閉じる。
・・・・・口を開いたら、言ってはいけないことを声に出してしまう。
「故郷・・・?」
沖田がいぶかしげに問う。
「ええ。」
「どこ、ですか・・・?」
「とても、とても遠いところにあります。だから、沖田さんとは、ここでお別れします。」
ナツは、頭を下げた。
もう少し、もう少しだけ・・・泣くのは後だ。
ナツは、ぎゅっと唇を噛み締める。
沖田さんの顔は見えない。
彼は今、どんな顔で私を見てくれてる?
たぶん、さっきの彼の言葉の続きは、私が聞きたくて、欲しくて、ずっと待ち望んでいたもの。
だけど、もう、もらえない。
もらえなくなっちゃったんだよ・・・
きっと、こういう巡り合わせの下にいるんだね、私たち。
運命の歯車があるなら、それは今の私の心のように軋んで、残酷な音を奏でるんだろう。
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