9. 約束

4/22
前へ
/283ページ
次へ
ナツは、必死に目を開いた。 ・・・・・目を閉じたら、涙がこぼれてしまう。 ナツは、必死に口を閉じる。 ・・・・・口を開いたら、言ってはいけないことを声に出してしまう。 「故郷・・・?」 沖田がいぶかしげに問う。 「ええ。」 「どこ、ですか・・・?」 「とても、とても遠いところにあります。だから、沖田さんとは、ここでお別れします。」 ナツは、頭を下げた。 もう少し、もう少しだけ・・・泣くのは後だ。 ナツは、ぎゅっと唇を噛み締める。 沖田さんの顔は見えない。 彼は今、どんな顔で私を見てくれてる? たぶん、さっきの彼の言葉の続きは、私が聞きたくて、欲しくて、ずっと待ち望んでいたもの。 だけど、もう、もらえない。 もらえなくなっちゃったんだよ・・・ きっと、こういう巡り合わせの下にいるんだね、私たち。 運命の歯車があるなら、それは今の私の心のように軋んで、残酷な音を奏でるんだろう。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加