9. 約束

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「顔、上げてください。」 しばらくしてから、沖田の声がナツの耳に届いた。 ゆっくりと頭を上げると、沖田の視線とぶつかった。 「記憶が戻って、良かったですね。」 沖田は微笑む。 「ありがとうございます。沖田さんも、身体大事にしてくださいね。」 ナツも、笑って答えた。 ・・・・・ちゃんと笑えてる、私? ナツは、沖田に向かって、右手を差し出す。 「?」 沖田は首を傾げる。 「握手。私の故郷での、お別れの挨拶です。手を、握ってもらえませんか?」 そして、固く結ばれた手。 沖田の手は思っていたより大きくて、ゴツゴツしてて、硬かった。 お互いに、離すのが名残惜しくて、その手を解くことができない。 ふっと、沖田の手の力が強まり、ナツは彼の腕の中に引き寄せられた。 「このままで。」 彼の声も、身体も、かすかに震えていた。 ナツはそっと目を閉じる。
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