9. 約束

6/22
前へ
/283ページ
次へ
沖田さんの温もり、匂い。 ちゃんと覚えておこう。 今だけ、時間が止まってくれればいいのに。 ・・・だけど、そんな都合の良い願いが届くわけもなく。 「コホッ、コホッ。」 乾いた咳が沖田の口から漏れ、慌ててナツから離れた。 「・・・?」 「うつしてしまったら、困ります。」 哀しそうに笑う沖田。 ・・・もしかして、彼は、自分の病気に気づいてる? 「まだ、風邪治らないんですか?ちゃんとご飯食べて、薬飲んで・・・」 我慢していた涙が、ナツの瞳からこぼれ落ちた。 沖田の指が、そっとその涙を掬い取る。 そして、そのままナツの頬を手のひらで包む。 「約束、しませんか?」 「何を?」 ナツが、首を傾けて、先を促す。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加