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一応調書をとる必要があるため、死体の検分には永倉を向かわせた。
「ついでに、町の様子も見て来い。」
池田屋で、左指に怪我を負っていたため、残党狩りに加わることができず、永倉は屯所で待機していた。
彼は、いささか退屈を持て余していたため、土方の指示に従い、勇んで出かける。
二条大橋下の河原に横たわる死体。
囲む野次馬をかき分け、側による。
かけられた筵から、白く細い腕がのぞく。
「女?」
いぶかしげに眉を寄せ、筵を剥ぎ取る永倉。
身体中に見られる刀傷。
致命傷は、背中からの刺し傷、か。
うつ伏せになっていた身体を、表に返す。
「!」
青白い顔。閉じられた瞳を被う長いまつげ。
口元に、うっすら微笑みを浮かべる
まるで、幸せな夢を見ているような表情。
・・・・・・こいつぁ?
つい、先日まで屯所にいた女。
火事の中左之に助け出され、何日間か尋問のために留め置かれていた。
「また、後で」
総司の横で微笑んでいた、美しい女。
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