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「お前、身体はもういいのか?」
心配する永倉の問いかけを無視して、沖田はその腕を掴む。
「彼女は?彼女はどこに?」
「あぁ・・・?二条大橋のたもとだ。」
沖田は身を翻し、走り去る。
「待て!総司!!」
「?」
「ばか、早くあいつを追うんだ!」
永倉にはわけがわからない。躊躇していると、土方の怒声が飛ぶ。
あわてて、沖田の後を追って走ってゆく。
「こんなときに見つかるなんて、な。事件に巻き込まれたか?」
誰もいなくなった部屋で、土方はつぶやく。
感傷にふけっている場合ではないことを思い出し、仕事に戻る。
調べるのは後だ。
今は、上への報告書を書き上げるのが先決である。
煙管をふかすと、煙を目で追い、一瞬だけ瞑目する。
後ろを振り返っている暇はねぇ。俺たちは、これから前に進むんだ。
次に目を開けたときには、女のことは頭から消えていた。
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