1. 終わりの始まり

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「行け・・・」 彼の最後のつぶやき。 どこへ・・・? 私は、彼の身体に刺さったままの刀から、手を離してしまいました。 土方さんがいつの間にか側に来て、私の刀を抜き取ります。 血に濡れた刀身が、雨によって洗い流されていく。 その刀を私に向かって差し出します。 受け取れ、と。 震える手で、刀を受け取ると、その重さが何倍にもなったように感じて、動けなくなりました。 土方さんは無言で顎をしゃくり、引き上げの合図が送られます。 いったん八木邸を出て、先ほど落ち合った場所に戻って着替えます。 まだ、半刻(1時間)くらいしかたっていないのに、ここに来たのがずっと前のような気がします。 血に濡れた着物を処分し、番傘を差して、闇にまぎれて屯所に戻る。 全てが、現実ではないような、夢を見ているような、ゆっくりとした時間。 手に残る感触だけが、これは夢ではないことを知る、唯一の手段。
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