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部屋に戻ったものの、私は眠ることなんてできず、雨の降る庭へ出ました。
人目につかない場所を見つけ、木に背をもたれて地面に座り込み、自らの震える手を見つめました。
近藤さんたちが、京へ行くから、私も一緒についてきた。
武士になる。
将軍をお守りする。
そんな大義名分を、私は抱いてはいない。
ただ、また置いていかれるのが嫌だったんです。
人の命を奪うには、あまりにも軽すぎる理由で・・・・
私は、どこへ向かって進んでいるのでしょうか?
天を仰ぎ、雨が、私の手に付いた血も、記憶も、全てを洗い流してくれることを願いました。
木の下にうずくまる黒猫が、闇と同化して、そんな私を見つめていました。
緑に光る目で。
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