追浜エレクトリカル

2/6
前へ
/6ページ
次へ
優しさの証を手に入れるために、私は赤い電車に乗り込んだ。 そう認めてしまえば、不思議と心が軽くなった気がした。 朝から降り続いた雨のせいで、オレンジ色の床はすっかり水浸しになっていて、歩く度にキュッキュッと不愉快な音を立てる。 なんで今日に限ってこんな天気なのか。 窓から見える厚い雲に小さく文句を放つと、私はゆっくりと座席に腰をかけた。 京急川崎駅を出発した快速特急電車は、物凄いスピードで次々と駅を通過していく。 だが、目的地の追浜にたどり着くまでは、まだいくらか時間がある。 心地よく暖かいくつろぎの空間は、私に自分の気持ちを整理する余裕を与えてくれた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加