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窓から見える雨粒は、まるで矢のように薄暗い街に降り注ぐ。
こんな激しい雨では、傘を差しても殆ど意味がないだろう。
それでも、人は冷たさから我が身を守ろうと、傘を開く。
それは、まるで私とあの人のようだなんて、それこそ意味の無い考えが、頭をよぎったりした。
「……危ない!」
不意に、私は呟く。
猛スピードで通過するこの電車の、それこそ目と鼻の先に、ずぶ濡れになった学生が二人、佇んでいたのだ。
男女だったから、カップルだろうか?
おおかたケンカでもして、お互い自棄になったのだろう。
本当に死ぬつもりは無いのだろうが、間違えてよろけでもしたら大変だった。
大丈夫、あなた達は未来を繋げたよ。
どんどん離れていく井土ヶ谷駅に向かって心の中で呟く。
次は、私が未来を繋げる番なのだ。
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