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追浜に辿り着いた私は、未だ降りしきる雨にため息を吐いた。
電車を降りる頃には少しは止んでいてくれると思っていたのに。
まあいい。
目指す雷神社は駅から目と鼻の先にある。
せっかくここまで来たんだから、憂鬱な気分になる前に用事を済ませてしまいたい。
階段を上り、改札を抜けると、眼前に広がるペデストリアンデッキ。
遙か遠くまで見通せる手摺から先を望んでも、今日は悪戯な雨がアスファルトではしゃぐ姿を見られるのみだ。
目の前には、少しのテナントだけ残して抜け殻になったショッピングモールが見える。
商店街と競合し、結局共倒れしてしまったのだ。
何フロアも占拠していた大手デパートは撤退し、虫食いのようになったモールの中に、いくつかの店が必死で商いを営んでいる。
大きな声で、満面の笑顔で。
虫食いになった私にも、あんな笑顔はまだ残っているだろうか。
答えはもうでている。
だからこそ、私はここに来たのだから。
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