第3話

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次の日 今日は休暇前の最後の仕事。これから12月いっぱいは休み。 お正月までには体調が落ち着けば良いな…。 「ありがとうございました」 帰るお客さんを見送って、使っていたテーブルを片付けていると、目眩がした。 「うわ」 テーブルに慌てて掴まって、バランスを整える。 「危ない危ない…」 食器を割ったりして、余計な仕事は増やしたくない。 ピンポーン ベルスターの音がした。 「はい、お伺いします」 一人だから大変だ。何が大変って、全部自分でやらなきゃいけないこと。 「以上でよろしいですか?」 「はい」 「それでは失礼します」 私はデザートの追加注文を取って、作りに向かった。 デザートやお酒はキッチンでなく、こちらが作らなくてはいけない。 ソフトクリームとパフェを作ってる間に伝票をもらって、注文を受けたテーブルに運んだ。 「お待たせしました、ショコラパフェです」 「大きい!」 子どもが大喜びだ。 「牛乳ソフトです」 「はーい」 お母さんと一緒に、嬉しそうにデザートを食べる子どもの笑顔を見て、私もつい笑った。 良いなぁ…私もいつか、あんな風に…。 「ん?」 料理ができた音がしたから、ランプを見てみると、どうやら私に用があるらしい。 「店長?」 「城内、終わり」 「はーい」 もうそんな時間か。それなりに仕事があったから、あっという間だったな。 「こんばんは」 私と交代の人も来た。 「こんばんは」 私はゴミ箱の袋を交換して、交替で来た人の身だしなみチェックをして、控え室に行った。 「お疲れ様でーす」 「はい、お疲れ様」 先に戻っていた店長がいた。 「じゃあ、しばらく休みになりますが、何かあれば呼んで下さい」 私は店長には恩義がある。お願いされたら断れない。 人見知りという、接客業をする上で致命的な欠点があるにも関わらず、私を雇ってくれた。 たくさんミスもしたし、私のせいで失ったお客さんもいると思う。 それでも一年以上、この店に置いてくれた。 おかげで、かなり人見知りが克服された。 「じゃあ、その時はお願いします」 私は着替えると日報を書いて、控え室を出た。 「お先に失礼します」 「お疲れ様」
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