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屋上へとたどり着いた私は、外へと繋がる分厚いガラス製の扉に背を任せ、お気に入りの詩集を読み始めた。
ボードレール著作。悪の華。
人間の内にある暗黒面が美しく表現されているこの詩集は、数ある詩集の中でもかなりのお気に入りだ。
しかし、私はなかなか物語に没入できずにいた。
外に行きたい。
そう思ったけれど、現実問題外に出るのは不可能だ。
校内をうろうろしていれば見つかっちゃうし、外出しても制服では行ける場所に限りがある。それにどうせまた戻ってくるのに学校の外に行く気力なんて私にはない。
授業をさぼっている訳だけれども、建て前は準備している。
生理痛で保健室にいました。
その言い訳をするためには最悪でも帰りのホームルームには顔を出さなければならない。
そう考えると一番〝外〟に近いのは屋上になる。
でも、私の背中を冷やすこの分厚い扉のせいで屋上には出られない。
出るためには職員室から拝借と言う名の窃盗で鍵を持って来る必要がある。
そこまでのリスクを背負ってまで屋上に出るつもりも勇気も私にはないの。
だから〝ここ〟でいい。
屋上に行くためだけの階段の果て。生徒も教師もここへは来ない。
遠くから聞こえる授業の音達。
この場所は私にとって授業から隔離された校内。
校内だけれど学校の日常に深く関わらない場所だから、私はここを『外』と呼んでいる。
呼んで満足している。
けれど本当は。
私は立ち上がりガラス製の隔たり越しに屋上を眺めた。
けれど本当は、屋上に出て、貯水タンクの上で空を見上げたい。
この学校の近くに高層物は無い。
きっと身体中で空を感じられるはず。
そんな憧れも、目の前の扉と閉ざされた鍵によって破壊されてしまう。
悲しくならないうちに読書に戻ろうと思ったその刹那。
私は目を疑った。
「屋上に誰かいる」
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