第四話 改心

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 お品と妙蓮坊は楓太郎を両側から支えて歩く。  歩けば集落に入り、人々は怪訝な顔をして三人を見送った。 「妙蓮坊さま、皆に教えなくていいの?」 「いま慌てて教えれば恐慌を来たす。まずは寺で彼の話を聞こう」 「そうですね」  楓太郎は支えられながら、黙って、己のこれからを考えた。偽名を使えば、助かるかもしれない。などと考えていたとき。 「ぬしゃ、赤葉楓太郎じゃろう」  と、妙蓮坊は小声でぽそっと言った。言われて楓太郎はどきりと、妙蓮坊を見やった。 「赤葉楓太郎?」 「しっ」  お品が不思議そうにするのを見て、妙蓮坊は黙るようにうながした。 「俺を知っているのか?」 「まあな。じゃが話は寺でじゃ。それまで黙っておれ」  人々の怪訝な眼差しを受けながら、三人は寺に入った。  お堂に入れば、中央に南無妙法蓮華経と書かれた大曼荼羅が掛けられている厨子(ずし)があった。  その大曼荼羅の入った厨子の前に檀があり、供養の品がいくらか供えられて。それ以外にはなにもなく、簡素な小寺であった。 「あ、あたし水を汲んできます」 「うむ」  楓太郎をお堂の真ん中に座らせると、お品は立ち上がって井戸に向かった。妙蓮坊も座り楓太郎と向き合っている。 「このような成り行きで赤葉楓太郎に会うとは思わなんだぞ」 「……」  楓太郎はしばし黙ったあと、 「俺をどうする?」  と言った。妙蓮坊はふっと笑い、 「そうさな」  と腕を組んで思案する仕草を見せる。 「本当にぬしゃ悪人面じゃのう」 「からかうな」 「いやすまぬ。そうじゃのう、おぬしをどうしようかのう」 「……」  そうしているうちにお品が水を入れたお碗を持ってきて、ふたりの前に置く。  楓太郎は碗を手にして、水を一気に飲んで、一息つく。 「落ち着いたかの?」  妙蓮坊は笑顔で言う。相手が赤葉楓太郎と知ったうえでだ。楓太郎もこんな対応をされたことがなくて、少し戸惑っているようだ。 「ねえ、妙蓮坊さま。この人、赤葉楓太郎っていうの? どうして知っているの?」 「うむ、わしが各地を巡業しておったころにな、番場重時なる大名の領にて、こやつの人相書きを見たのよ」 「え、人相書き?」 「左様。こやつはの、なうての山賊じゃて」  妙蓮坊はかっかっかと笑いながら楓太郎を指差した。
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