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血を撒き散らしながら武者は倒れ。その屍を飛び越えて、楓太郎は雄叫び上げて武者立ち向かって駆ける。
「小癪な。数はまだ我らが上ぞ!」
相手はひとりである。武者たちは素早い動きで楓太郎を取り囲み。四方から太刀を閃かせる。
だが楓太郎はおそれるどころかにやりと笑い、太刀を閃かせて素早く回れ右をすれば。
武者たちの握る太刀はことごとく柄のところから折れたではないか。
「や、やや!」
これには武者たちも狼狽して。その一瞬の隙を突いて、再び太刀を閃かせて回れ右をすれば。
今度は次々と武者たちの首が刎ね(はね)飛ばされるではないか。
「あ、あわわわ……」
車を引く人足たちは楓太郎が瞬時にして武者たちの首を刎ねるのを見て腰を抜かして尻餅をつき、中には失禁する者まであった。
首と胴の離れた無惨な武者らは切り口から血を噴き出しながらどおっと倒れてゆく。
会心の笑みを浮かべる楓太郎は返り血を浴びて、その姿は凄惨なものであり、人足たちは、
「お、鬼じゃ!」
と弾かれるように逃げ出す者もいたが、中には腰を抜かして動けぬ者もあった。
その者に楓太郎は迫り、躊躇も容赦もなく、太刀で心臓を貫くのであった。
「一丁あがり」
邪魔者はすべて片付けて、太刀を肩に乗せて。米俵を嬉しそうに見つめる。
「おうい。もういいぞ」
さきほど隠れていた場所に呼びかければ、十名ほどの男たちが現れて、武者や人足の屍をどけて車を引き出す。
「いやあ、今日もお頭のおかげで米が食えるわい」
と、男たちはにこにこしながら米俵を積んだ車を曳く。
「ははは。これくらい朝飯前よ」
楓太郎は得意気に笑った。年貢の米を強奪したことに対して罪悪感などなかった。ただ、米を奪った喜びがあった。
これらは、いわば山賊であり。赤葉楓太郎はその頭であった。
楓太郎をはじめとする男たちはしばらく車を曳くと立ち止まり。人の腰まで伸びた草を掻き分ければ。そこに脇道があらわれて。その脇道へと入る。
その先には、昔建てられたと見受けられる古い砦があり。
楓太郎ら山賊たちはそこを棲家にして、山賊働きをしていた。
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