(壹) 巡り会い

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「さっき手まで食べようとした事は謝るから、これ解いてよ」 丸ごと食べる気だったようだ。 それでも続けて訴える女性。 「カニバリズムの趣味は無いのよ。あたしは専ら肉が好きなだけなの。人間じゃなくて牛とか豚とか鳥とかの」 「好みなんて聞いてない」 このまま無視してもしょうがないので、ゆん汰が応対することに。 「で、あんな所に倒れていたのは何故だ?物盗りでもしようとしたのか?」 「そんなわけないでしょ。ここ最近二・三日何も食べてないんだから、物盗りするほどの力があると思ってるの?」 少なからず、ロケットジャンプを繰り広げた者に言う筋合いは無い。 しかし、先ほどの謝罪(誠意はなかったものの)や、空腹状態といい、本当に物盗りではないようだ。 「……ゆん汰、解いてやろうぜ。どうも俺たちが思うほど悪者でもなさそうだし」 「わかった」 右手と左手を軽く振ると、ひゅん、ひゅん、と風を切る音をさせて、女性の拘束を解いた。 「はぁ、あの体勢は疲れたわ」 拘束が解かれると、女性はその場で座り込んでしまった。 両腕だけで吊るされ、足がつくかつかないかの微妙な高さだった為か、疲労が溜まっていたのだろう。 「ほら、パンだ。食べかけだけどな」 「あ、ありが」 とう。と言い切る前に、ゆきみからパンをひったくり、バクバクとパンを貪り食う。 「(……お礼くらいちゃんと言え)」 そうしてる間に、女性はいつの間にかパンを食べ終わっていた。 しかし、ぐぅ、と腹の虫が鳴く。 「…………」 「……おかわり」 「もう無い」 仕方が無いので、森を抜けた先にあった町まで行くことにし、 その町にある食堂で、女性に食べ物を提供した。しかし、 女性の持つ食欲は、二人が予想していたものとは遥かに上回っていた。 「「…………」」 テーブルの上に山のように積まれる皿、その麓に、まだ料理を口に入れ、咀嚼する女性。 しかも料理はまだ運ばれてくるようで、空っぽの皿と入れ違いになるように、肉が盛られた皿が置かれる。 「……ブラックホールを連れてきてる気分だなぁ」 「確かに、とんでもないやつを連れてきた気がする。あれ三日分の量だぞ」 目視で見る限り、一人の人間が一回食べる量としては常軌を逸していた。 しかしありのままの事を言うとするなら、これは一人の女性が平らげたものである。
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