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「さっき手まで食べようとした事は謝るから、これ解いてよ」
丸ごと食べる気だったようだ。
それでも続けて訴える女性。
「カニバリズムの趣味は無いのよ。あたしは専ら肉が好きなだけなの。人間じゃなくて牛とか豚とか鳥とかの」
「好みなんて聞いてない」
このまま無視してもしょうがないので、ゆん汰が応対することに。
「で、あんな所に倒れていたのは何故だ?物盗りでもしようとしたのか?」
「そんなわけないでしょ。ここ最近二・三日何も食べてないんだから、物盗りするほどの力があると思ってるの?」
少なからず、ロケットジャンプを繰り広げた者に言う筋合いは無い。
しかし、先ほどの謝罪(誠意はなかったものの)や、空腹状態といい、本当に物盗りではないようだ。
「……ゆん汰、解いてやろうぜ。どうも俺たちが思うほど悪者でもなさそうだし」
「わかった」
右手と左手を軽く振ると、ひゅん、ひゅん、と風を切る音をさせて、女性の拘束を解いた。
「はぁ、あの体勢は疲れたわ」
拘束が解かれると、女性はその場で座り込んでしまった。
両腕だけで吊るされ、足がつくかつかないかの微妙な高さだった為か、疲労が溜まっていたのだろう。
「ほら、パンだ。食べかけだけどな」
「あ、ありが」
とう。と言い切る前に、ゆきみからパンをひったくり、バクバクとパンを貪り食う。
「(……お礼くらいちゃんと言え)」
そうしてる間に、女性はいつの間にかパンを食べ終わっていた。
しかし、ぐぅ、と腹の虫が鳴く。
「…………」
「……おかわり」
「もう無い」
仕方が無いので、森を抜けた先にあった町まで行くことにし、
その町にある食堂で、女性に食べ物を提供した。しかし、
女性の持つ食欲は、二人が予想していたものとは遥かに上回っていた。
「「…………」」
テーブルの上に山のように積まれる皿、その麓に、まだ料理を口に入れ、咀嚼する女性。
しかも料理はまだ運ばれてくるようで、空っぽの皿と入れ違いになるように、肉が盛られた皿が置かれる。
「……ブラックホールを連れてきてる気分だなぁ」
「確かに、とんでもないやつを連れてきた気がする。あれ三日分の量だぞ」
目視で見る限り、一人の人間が一回食べる量としては常軌を逸していた。
しかしありのままの事を言うとするなら、これは一人の女性が平らげたものである。
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