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「お前は、その『能力者(スキルホルダー)』なんだな?」
「そうね。でもスキルは見せられないわ。あれって結構きついのよ。無駄打ちするとエネルギー切れになっちゃうし」
見せてくれとは言っていないのに、見せたくないアピールをするゆな。ゆん汰は内心鬱陶しく思った。
「そういうあんたはどうなの?突然だったとはいえ、あたしを一瞬で拘束したじゃない。あれもあんたのスキルなの?」
「いや」
ひゅん。と指を軽く動かすと、ゆなの前にあったコップが一人でに動き、ゆん汰の前まで移動する。
「俺のはスキルじゃない。これは『闇殺糸(アンサツシ)』といってな、ピアノ線を用いた暗殺術だ。お前を縛ったのも、この糸だよ」
コップに巻きついた糸を解いてから、ゆなに返す。
「あん、さつし。なんか暗殺士とかけてるわね。それ」
「まぁ暗殺者だからな。俺は」
「マジで!?」
だん!とテーブルに身を乗り出しつつ、見開いた目でゆん汰を凝視する。
いや、そこまで見つめたって、何も見えないだろう。
「もしかしてその格好、暗殺者の内で流行ってるファッションなの?」
「ファッションに見えるのなら、お前のその鎧もそうなんだな。いや違う。
これは周囲に目立たないための服装だ。フードを目深に被ることで、取り逃がした際にも、顔を割り出される心配がないようにだ」
「でも、それだと逆に目立たない?」
「だとしたら、ジャンパーの色に問題があるな。あるいは当人の不手際だ」
ジャンパー自体が悪いことを一切受け入れないようである。
その様子を、ゆきみはニヤニヤしながら見ていた。
そんな時、ゆん汰が話の矛先をゆきみに変える。
「それよりも、こいつのことは何も思わないのか、俺が言うのもなんだが、こいつも色々と気になる所があるだろう」
「んー、そういえば、そうね」
左目に錨の模様の入った眼帯に、白のスーツ。聞きたいことが一つくらいあるだろうが、
「特に無いわ」
「無いんかい!」
きっぱりと言ったゆなに、ゆきみは芸人ばりのツッコミを見せた。
「眼帯の事を聞かれると思ったけど、敢えてそこはスルーなの?」
「どうせ隻眼になった経緯喋るだけでしょ?それだったら聞かないわ」
「なかなかの強者だな。お前……」
少し崩れたスーツを直しつつ、座り直した。
「しかし、はるばる和倉から来たってことは、その旅の目的地があるんだよな?どこに行くんだ?」
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