(壹) 巡り会い

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「お前は、その『能力者(スキルホルダー)』なんだな?」 「そうね。でもスキルは見せられないわ。あれって結構きついのよ。無駄打ちするとエネルギー切れになっちゃうし」 見せてくれとは言っていないのに、見せたくないアピールをするゆな。ゆん汰は内心鬱陶しく思った。 「そういうあんたはどうなの?突然だったとはいえ、あたしを一瞬で拘束したじゃない。あれもあんたのスキルなの?」 「いや」 ひゅん。と指を軽く動かすと、ゆなの前にあったコップが一人でに動き、ゆん汰の前まで移動する。 「俺のはスキルじゃない。これは『闇殺糸(アンサツシ)』といってな、ピアノ線を用いた暗殺術だ。お前を縛ったのも、この糸だよ」 コップに巻きついた糸を解いてから、ゆなに返す。 「あん、さつし。なんか暗殺士とかけてるわね。それ」 「まぁ暗殺者だからな。俺は」 「マジで!?」 だん!とテーブルに身を乗り出しつつ、見開いた目でゆん汰を凝視する。 いや、そこまで見つめたって、何も見えないだろう。 「もしかしてその格好、暗殺者の内で流行ってるファッションなの?」 「ファッションに見えるのなら、お前のその鎧もそうなんだな。いや違う。 これは周囲に目立たないための服装だ。フードを目深に被ることで、取り逃がした際にも、顔を割り出される心配がないようにだ」 「でも、それだと逆に目立たない?」 「だとしたら、ジャンパーの色に問題があるな。あるいは当人の不手際だ」 ジャンパー自体が悪いことを一切受け入れないようである。 その様子を、ゆきみはニヤニヤしながら見ていた。 そんな時、ゆん汰が話の矛先をゆきみに変える。 「それよりも、こいつのことは何も思わないのか、俺が言うのもなんだが、こいつも色々と気になる所があるだろう」 「んー、そういえば、そうね」 左目に錨の模様の入った眼帯に、白のスーツ。聞きたいことが一つくらいあるだろうが、 「特に無いわ」 「無いんかい!」 きっぱりと言ったゆなに、ゆきみは芸人ばりのツッコミを見せた。 「眼帯の事を聞かれると思ったけど、敢えてそこはスルーなの?」 「どうせ隻眼になった経緯喋るだけでしょ?それだったら聞かないわ」 「なかなかの強者だな。お前……」 少し崩れたスーツを直しつつ、座り直した。 「しかし、はるばる和倉から来たってことは、その旅の目的地があるんだよな?どこに行くんだ?」
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