(壹) 巡り会い

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何気無く言ったゆきみの発言に、ゆなは沈黙するように口を閉ざした。 「……?」 その、不自然な沈黙に、ゆん汰は奇妙に感じた。 ゆきみが問い出した時に、ゆなが一瞬、怯えるような表情を浮かべていたからである。 そんな中、ゆなは長年の沈黙を破るように口を開いた。 「京都、って言えばわかるかしら」 それは、ゆきみとゆん汰が向かう場所だ。しかし何故ゆなが、それを口にすることを躊躇ったのかわからなかった。 「京都か。奇遇だね。俺たちも京都に行く用事があるんだ」 「?そうなの?」 「……まぁな」 先ほどまであった違和感を感じつつ、ゆきみの言葉にゆん汰は同意する。 一方ゆきみは、さしてゆなの違和感を感じずに、ある提案を申し出た。 「どうせ目的地は一緒だ。何なら一緒に行こうぜ?旅は道連れって言うし」 「えっ?」 思いがけない話だったようで、ゆなは惚けた顔になった。 「な、ゆん汰も賛成だろ?こっから通るにも、一人ではさみし過ぎる」 「ま、まぁ……そうだが」 「はい決定!いいよな?」 同意を求めるような眼差しをゆなに向ける。 しかしゆなは内心、それに対する拒否反応を感じていた。 同行することに、拒否反応を感じていた。 それは、ゆん汰が暗殺者だから、ではなく。 ゆきみが変なノリだから、ではなく。 純粋に、自分と一緒に行くのに、拒否反応を感じたのである。 こんな人について来ていいのか? こんなあたしを連れていいのか? ゆなにはとても耐えられない。 『アレ』を見られたらとても耐えられない。 「……素敵な誘いだけど、悪いわね。お断りさせてもらうわ」 「えっ?なんで?」 「なんでもよ。あたしは、一人ぼっちがお似合いなんだから」 席から立って、足早に去ろうとするゆな。 その行動には、二人も予想しなかった。 「お、おい。それってどういう」 ゆきみが尋ねようとした時、食堂のドアが突然吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。 吹き飛ばされた要因はすぐにわかった。扉があった入り口から、武器を携えた集団がぞろぞろを入ってくる。 いずれも柄が悪く、下劣な笑みを浮かべた男たちだ。 「よぉ、平和ボケした愚民ども」 その言葉とともに、遅れて食堂に入る男。 その男は、ふくよかな中年の顔立ち、恰幅のある腹に、 左目に丸ゴーグルをかけ、肩にバイクのマフラーのような機械のついた機巧腕を右腕に装着していた。
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