17人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだあれ?」
乱入してきた集団に、ゆきみは訝しみつつ見る。
「多分ここらへんの盗賊だろう。しかし、あいつらの持ってる武器って……」
ゆん汰は集団に対してではなく、彼らの持っている武器に注目する。
ゆきみも遅れてその武器に注目して、目の色が変わる。
「この店にいる人間は全員有り金を出してもらうぜ。まぁ、死にたくなかったらなぁ?」
武器をこれみよがしに見せつける盗賊たち。この場に居合わせる一般人に、戦慄を憶えさせた。
しかし、対峙しているゆなは別だった。
ゆなは盗賊の親玉らしき肥満男の前に立ち、ふんぞり返るように見た。
「何かの冗談かしら?特にその身体といい、さっきの台詞といい。笑えたものじゃないわね」
そして、心の底から馬鹿にするように、罵倒してみせる。
安い挑発だが、目の前の肥満男には、忍耐や寛容さを持ち合わせていないらしく、逆撫でさせるにはちょうど良かった。
「……言ってくれるなぁ嬢ちゃん。死にてぇのか?」
脅すように、装甲に包まれた右手をゆなに近づける。
それでも、ゆなは毅然としていた。
「気安く死ぬとか口にしないでくれる?弱く見えるわよ。あとその腕は何なの?そういうファッションなの?馬っ鹿みたい」
「……わかった」
肩から伸びる二つの噴射口から、煙が噴き出す。
その際に、右腕に熱が帯び始めた。
「……?」
「じゃあ、死ね!」
男が、拳を放たんとした時に、ゆきみは行動を起こした。
いつの間にか手にしていた鎖鎌の分銅を、ゆなに目掛けて投擲する。
分銅はゆなの腕に絡まり、ゆきみはそのまま鎖を引っ張り出した。
「っ!?」
それに連動し、ゆなは引っ張り上げられ、男の拳をかわした。
引っ張られたことで、ゆなの足は地面から離れ、大きく宙に浮いた。
「よっ、と」
宙に浮いたゆなは、そのままゆきみにキャッチされる。しかし彼女の纏う鎧に結構重量があったため、体勢が崩れかけた。
「大丈夫か?」
「大丈……っていうか、なんであんな事したのよ!」
キャッチしたゆきみに対して、そんな無慈悲な一撃(パンチ)をお見舞いした。
「ひ、ひどいな……じゃあ、見てみろよ。お前の立ってたとこ」
促されるまま、ゆきみの指差す方向を見るゆな。
ゆなの立っていた位置から後ろの壁にかけて、焼き焦げた跡と、熱によって破壊された穴が空いていた。
最初のコメントを投稿しよう!