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「な、何よあれ……一体何が……」
「『豪炎機巧拳(バーニングナックル)』、ウチが製造している武器だ。しかし、これではっきりしたぜ」
男の持つ機巧の威力に呆然とするゆなをよそに、ゆきみは一歩前に出る。
「お前ら、『海洋商会』所有の輸送車を襲撃し、武器を強奪したのか?」
今まで若干飄々とした口調とはうってかわって、少し怒気が籠ったように感じた。
「……?あぁ、お前のその眼帯、『海洋商会』か?そういえば、そんなマークの輸送車を襲撃してたなぁ。それに乗ってた構成員を、この右腕で試して殺したのは爽快だったぜ」
ゆきみが、『海洋商会』の関係者だとわかり、襲撃したことを自慢げに話す男。
悔しい顔を見たいゆえの行動だと、ゆん汰は推測した。
「……そうか」
しかしゆきみは、男の望んだ反応とは程遠く、冷静だった。
「なるほど、それなら納得がいく」
「……納得?」
男の疑問を無視するように、ゆきみは続ける。
「数日前に、西方に武器を流通していた運搬役との連絡が途絶えていたんだ。その上帰還してこないから、原因を探るべく調査隊を派遣しようとした矢先、ゆん汰が京都に行く用事が出来て、京都に行くついでにその調査に来たんだが、
まさかそちらから来てくれるとは、思わなかったよ」
ハンカチサイズの布を片手に覆ってから、布を取る。
するとその手には、拳銃が握られている。
「武器を、回収させてもらうぞ、盗賊ども」
「……俺に刃向かう気か?こっちはこの装甲がある。まぁ俺を破ったところで、銃を持ち合わせた部下どもが待機してるぜ?勝てるもんなら、勝ってみろよ!」
ぶぉん!とマフラーから煙が噴く、またあの攻撃を繰り出すつもりらしい。
「…………」
「勝てねーよなぁ?そんな銃一つじゃあ、なぁ!」
火力をこめた打撃を、ゆきみに向けて放つ。
「っ!」
「ゆ、ゆきみ!」
打撃を受けたゆきみに、思わず名前を叫ぶゆな。しかし、ゆきみの身体は燃えなかった。
「……あ?」
「なんで燃えねぇんだ?って思ってるだろ?まぁ仕方ないだろうさ。そんなへっぽこパンチじゃあ、な」
男の拳を受けた腹部には、拳銃を取り出した際に使用した布がある。
あの布切れ一つで、打撃を押さえ込んだとは思えないが、熱波を防いだのはあの布であることは間違いなかった。
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