(零) 殺し屋、爆弾男

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「……そうビビるこたぁ、ねぇのにな」 銃声が発する前に、爆音が発した。 耳の鼓膜を破るような爆音ではなく、弾けたような軽い音。 その音が、何を発していたかと言えば、 男の拳銃を握る手が、突然吹き飛んでいたのだ。 「が、がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」 男は、あまりの激痛に手を抑える。 肝心の手は、指どころか手そのものを吹き飛ばし、もはや手首だけが残っていた。 「あーあーうっせーな」 呻く男に対し、加具土は冷静だった。 冷静に、男の頭を手で掴む。 「や、やめ」 懇願する男の言葉も虚しく、 男の頭は、吹き飛んだ。 しかし、頭が割れるように爆発したわけでなく、頭から爆風を放って爆発したのだ。 頭を吹き飛ばされた男をよそに、加具土は静かに空を見上げる。 『世界破滅事件』によって、大阪の空は灰色の雲に覆われている。大阪で青空を見ることは、決してない。 「……戻るか」 どんよりと、閉鎖的に閉ざされた雲を見てから、加具土はこの場から去る。 「ぼ、ぼくはどこ?わたしはだぁれ?あなたはなにさま?」 意味不明に言葉を乱立させて呟く男を置いて。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 『爆弾男』、それが彼の通り名でありあだ名であり肩書きである。 彼が持ち合わせるのは、 『揮発の種(クラッシュクライマー)』。 爆弾を作ることが出来るスキルで、時限式、点火式、接触式の三つのタイプの爆弾がある。 火力と威力は自在に操作され、癇癪から破壊までに及ぶ。 加具土が『爆弾男』と呼ばれる所以のスキル。 そしてもう一つ、これは実際、誰も知らない(知っていても、わずか数人程度)スキルがある。 『破壊の改竄(メモリアルダスト)』。 記憶を爆破するスキルで、人間の記憶を文字通り吹っ飛ばす。 一度爆破された記憶は元に戻らず、本人が色々と面倒なことになったら使用するものだ。 以上が、加具土の持ち得るスキルである。
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