(零) 殺し屋、爆弾男

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「…………」 加具土は、元大都市・大阪の外れにある、隠れ家である鉄筋コンクリートビルの一室で、ベッドに寝転がっていた。 こんな感じの小奇麗な鉄筋コンクリートビルは、普通ならどこぞのならず者によって占拠されるものだが、『爆弾男』加具土が隠れ家とするビルと知るや否や、このビルに手を出すどころか、一歩も立ち入らないものとなっている。 加具土の実力が、如何に凄いかが一目瞭然である。 部屋は六畳半程度の手狭で、壁にはゴーグルやらコートやらが立てかけれていて、机の上にブラックアウトしたノートパソコンが一つ。その他になぜかフィギュアが陳列している(これは拾ってきたもの)。 しかしそんな中で一番部屋を占領していたのは、加具土が寝ているベットであった。 「……そういえば」 寝転がりながら、ちらりと壁にかけている紙に目を向ける。 その紙は、殺害依頼の要件が書かれていた。 『『肆神教(シシンキョウ)』教祖・カンナギノ抹殺求ム』 『肆神教』。古都・京都にて突如として布教し、 絶望したこの世界で、『奇跡の力』を持つという『かんなぎ様』を信仰する新興宗教だ。 加具土が知る限り、上手いこと言い包めて献上品や供物を信者から巻き上げる宗教団体と聞いていた(しかし他の小さな宗教団体から反感を買っているようなので、流れた情報に若干語弊があるようだが)。 その『奇跡の力』とやらに、加具土は信じてはいないが、自分の持つスキルに対して思えば、もしかすれば存在するだろうと考えていた。 「一応、暇つぶしでやってやるかな」 依頼を暇つぶし程度で捉えるのは、些か失礼であろうが、とにかく加具土は暇つぶしで、その依頼を引き受けることにした。 壁にかけた革のジャンパーを羽織り、トレードマークであるレーサーのようなゴーグルをかける。 「……よし」 着た服を整えてから、加具土は部屋を出て行った。 これから殺害依頼を受けるというのに、彼は呑気にも、京都の和菓子である八つ橋のことを思い浮かべていた。 だが、加具土は京都で、新興宗教『肆神教』の真実を知ることなる。 どこよりも無残で、 なによりも悲惨で、 どれよりも残酷な、真実を。
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