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その原因は、とあるウィルス兵器による遺伝子変化であるが、
話が脱線してしまうので、詳しくは語らない。
とにかく、ゆきみは『能力者(スキルホルダー)』である。
スキルを得た経緯も、同じく脱線してしまうので省略。
「しかし奇跡を起こすスキルなんて聞いたことがないな」
「人形を操るスキルがあるなら、奇跡を起こすスキルぐらいあるだろうさ」
現にゆきみは、人形の姿をした武器の特注依頼をしたクライアントから、そのスキルを見ている。
そのクライアントに応えて、ゆきみは最高の武器を作った。
「そうは言っても、人を殺すスキルとか、世界を壊すスキルとか、運命を操るスキルとかあったら嫌だな。そんなのただのチートだチート」
この場では冗談で済ませているが、それらのスキルを『能力生産者(スキルマスター)』は所有しているので、あながち冗談にはならないだろう。
「どうであれ、その『かんなぎ様』に会ってみたらわかることだよ。それに『肆神教』がどんなものかも、この目で見た方がいい」
「それはお前に任せる。俺は『かんなぎ様』を殺す」
物騒に、殺すという言葉を放つゆん汰。
しかしゆきみは、はいはい。と投げやりに返した。職業柄、聞き慣れているのだろう。
「……?」
ふと、ゆん汰は何かを見つけた。
森の中、原っぱがある所で、女性がうつぶせで倒れていたのだ。
纏っているのは西洋騎士が纏うような甲冑鎧。
ロングのマロンブラウンの髪をした女性である。
「ゆきみ、女が倒れているぞ」
「マジか」
ゆきみも、倒れている女性を見つける
「森に迷って餓死したんだろうな。可哀想に、一応供養しておこう」
「勝手に殺すな」
女性の状態を確認するように、ゆきみが近寄った途端、
「……うぅ」
女性が、小さくうめき声をあげた。どうやらまだ生きているようだ。
「おい、大丈夫か?」
なんとか起こそうと、女性の背中をゆする。すると、
女性の腹から、ぐー、と情けない音がした。
「……どうやら、空腹で倒れていたみたいだな」
呆れるように言うゆん汰。
「一応、パンを持ってるんだけど、これで腹の足しになるかな?」
「とにかく食べ物ならなんでも良い」
そうか。とゆきみは了承を得て、右手を裏返し、その上から左手を添える。
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