11人が本棚に入れています
本棚に追加
「(この濡鴉と呼ばれた僕の肌をここまで見せられて、まともでいられる人は居ない……こんなこと言ってて馬鹿馬鹿しいとは思うけど)」
人前で人肌を晒すのを嫌がっていた自分が、ここまで大胆になってしまった事に、なんだが悲しくなったと、エネは静かに思った。
今度こそ手を出すだろうと、橙空を改めて見る。
「…………」
当人は何やら、エネの身体を注視していた。
やましさというより、観察するような目つきだ。
「……?」
何してるんだろう?と頭で思い浮かんだ瞬間、
橙空は突然、エネを押し倒す。
「えっ……?」
急だったため、惚けたような声を漏らしてしまうが、橙空はエネのはだけた着物を更に脱がしていく。
エネとしては、あちらから手をかけてくれたのは良いが、急に手を掛けてきた事に、エネは驚いた。
それをよそに、橙空は脱がしたエネの華奢な身体を触れた。
「んっ……」
シャワーを浴びてわずかに火照る身体なので、橙空の指先が冷たく感じる。
その冷たい感覚に、エネは喘ぎ声を小さく漏らす。
「ねぇ」
エネの身体をしばらく触れてから、橙空は静かに尋ねる。
エネにとっては、場違いな発言だった。
「君、ちゃんとご飯食べてる?」
「……えっ?」
こんな座敷で、まさかそんな事を言われたのは、後にも先にも初めてであった。
まさか彼女は医師なのかと思ってしまった。
「わたしの見立てでは、君は十代前半あたりかな。にしては体格が小さ過ぎだよ。栄養失調なの?」
エネはその問いに答えなかった。仕事に関係ない話はあまり言わないようにしているのだ。そうでないと、働いたという感じがしない。
それに、彼女が自分をここまで脱がせておきながら、未だに優しくお触りするだけに留まっていることに少し反抗的になりたくなった。
「んー?黙秘?黙秘なのかなー?」
と言いつつ、エネの華奢な身体をむにむに触っている。
手をかけてほしいと思ってはいたが、その手つきは何やらマッサージでもしてるような感じなので、物足りない気がする。
この人は本当に自分を手込めにする気がないのか。
「……そこまで沈黙を保つというのなら、わたしも考えがあるよ」
にぃ、と妖しく微笑む橙空。
身体を触っていた手を、そのまま後ろに回してから、横になっているエネの身体に抱き付いた。
丁度胸部あたりに、耳を当てる位置で抱き付いていた。
最初のコメントを投稿しよう!