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『世界破滅事件』から三ヶ月後、
東京都・鶯谷の地下にある『天蓋吉原』。
東京ドーム五つ分の広さを持つ、明ける事のない夜の街。
この街には、合法違法が混ざり合う遊郭が数多に立ち並び、大人だけしか立ち入れない。しかし、一つだけ例外がある。
『娼年』と呼ばれる、とある事情で身売りをされ、大人と情事をして、その報酬を得て生活している子供。
この『天蓋吉原』には、数多の娼年がいて、普通の遊郭に紛れて、娼年だけの男娼館が存在する。
それが今回の主人公、エネが居る『鳥籠屋敷(トリカゴヤシキ)』である。
そんな『鳥籠屋敷』に、数奇で奇妙な来客が訪れることを、エネは知らない。
「…………」
『鳥籠屋敷』の、六畳ほどの部屋に、エネは目を覚ます。外は相変わらずの夜だ。
いつまで寝ていたかは覚えていないが、六時間ほど寝ていたことは確かだった。
「……はぁ」
重く吐くため息、起きるたびについている気がした。
『起きたかエネ。早くシャワー浴びろ。そろそろ店を開けるぞ』
天井の隅にあるスピーカーから、男の声がする。声の主は、この『鳥籠屋敷』のオーナーだ。
もとい、エネを娼年として調教させた張本人でもあった。
エネは彼が嫌いだった。しかし逆らえば鞭を食らう。だから従わないといけない。
ある一定の額まで稼げば、エネは屋敷を出ることができる。しかしエネはこの屋敷から一度も出ていないのだ。
だから、自分を売り飛ばし、金にすがった両親が今頃どこで何をしているのか、今のエネにはわからない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
シャワーを浴びる際に、エネは自分を映す鏡を見る。
日本人とは思えない金色の髪、女性のような白い肌に細腕、男か女かわからない中性的な顔、そして、
今まで弄ばれ、蹂躙され、傷つけられた身体。
エネはそれら全てが醜く、嫌悪していた。
こんなもの、娼年として扱われてもいいように作られた紛い物だ。
成長が止まるくらいの投薬に、遺伝子組換えによる変異、見た目で男性的要素のある部分を削ぎ落とされて、今このような有様になった。
だから、エネはこの姿が嫌いだった。
「…………」
壊したいなぁ。 こんなニセモノ。
腐った小枝みたいに弱そうだし、なにより、気に入らないし。
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