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『碧海 橙空(おうみ とあ)』は魔法少女である。
しかし魔法少女と聞くと、
コンパクト一つで色んな物に変身するとか、
悪者に対して『月に変わってほにゃらら』と言うとか、
願い事を叶える代償に怪物と戦うとか、
そういうものを連想するが、
実際の魔法少女は、そういう枠には治まらない。
この場で記述する魔法少女とは、魔法使いにおける半人前の魔女のこと。
即ち碧海 橙空は、半人前の魔法使いと言えよう。
しかし、彼女がこの先、本当の意味で魔女と呼ばれることはない。
なんせ彼女の母であり、『厭世の魔女』と恐れられた最後の魔女は、あの『世界破滅事件』の影響で死んでしまったのだ。
誰も彼女を、将来魔女と判定する者は、この世に居なくなった。
それでも橙空は、母が死んでも困りはしなかった。
勿論死んだことには悲しんだものの、しかし生活するに困ることは特に無い。
魔法薬の調合に関する文献、魔法に関する書物、病憑(やみつき)道具や曰憑(いわくつき)道具の本等、実家の本棚に遺されているからだ。
生活に対して不便なことがないからだ。
そして橙空は、母の言いつけで禁止されていた、人間との接触を図った。
それは、彼女が一番したかったことである。
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