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…縛られた体の感覚はとうに失われていた。
…朦朧とした意識のまま状況を振り返る…
私は…
…山に柴を拾って来るように言われたんだ。
…それから…
お美津ちゃんと一緒に柴を拾って…
背負い籠にいっぱいになったので村に戻ろうと歩いていたんだ…
それで…
…二の橋のところで村の男衆が集まって何やら騒いでいて…私たちを見るなり恐い顔をして追いかけて来て…
…先にお美津ちゃんが逃げ出して…
…でも捕まって…背負い籠を振り回して大声を張り上げて抗って…
拾ってきた柴が辺りに飛び散る…
「こらお美津、お前は関わりねぇだからおとなしくせぇ!」
…誰かがそう叫んだ…
…私は足が竦んでしまって声も何も出なかった。
「仕方ねぇだ…お美津も括り上げて一緒に連れて行くしかねぇべ。」
男三人掛かりで腕を抑えつけられ荒縄で後ろ手に縛り上げられて行くお美津ちゃん…足をばたつかせて抵抗するのを別の腕が抱え込む…寄ってたかって縄を巻かれあっという間に雁字絡めに縛り上げられて行く…
「ヤメれぇ、何するだ。ほどけぇ!」
…それでも金切り声を上げて身をよじり続けるお美津ちゃんを、私は羽交い締めにされたまま成す術なく見詰めていた…
「黙らせろや。」
…誰かがお美津ちゃんの頭に被っていた手拭いを毟り取って丸めると無理やりお美津ちゃんの口に捻込んだ。そして自分の腰に下げてあった手拭いを抜いて細く捩ってそれをお美津ちゃんの口に咬ませると力任せにしごき上げてうなじで括った…
猿轡を咬まされて雁字絡めの体を地面に転がされてもなお首を振り身を捩って抗い続けるお美津ちゃん…晴天続きで乾ききった地面の上だから着物も髪も直ぐに土埃まみれになる。
業を煮やした男がちっと舌打ちするなり縛り上げたお美津ちゃんの縄を掴むと首の後ろに手刀の一撃を見舞う…
「おまえは関わりねぇって言ったべ。おとなしくしていりゃあ痛い思いもせんで済んだもんを…」
「窮屈だがしばらくはそのまんまでおとなしくしていてもらうしかねぇべ。」
死んだように動かなくなったお美津ちゃん…いつの間にか私の口からは引きつった悲鳴が出ていた…
「ひぃ…ひぃぃぃ…」
お美津ちゃんを縛り上げて昂った男達の目が一斉に私に向いた…
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