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たった今暴れるお美津ちゃんを縛り上げたばかりで気が立ったままの男達の手は容赦なかった。
私は体が竦んでしまってろくに手向かいすることも出来ないというのに、縄が力任せにどんどん巻きついて来る…
腕を捻り上げられ肩が抜けてしまいそうになっても男達は力を緩めようとはしない。手首が千切れるくらいきつく締められた縄がそのまま二の腕から胸をぎしぎしと締め上げる。手首は背中の高い位置で固定されてしまった。息を吸うだけで肩に痛みが走る…
…でもなぜ?
その時気がついた。
私の縄は色が違う…お美津ちゃんを縛っているのは藁を綯って作った荒縄…ごく当たり前に野良仕事に使う縄なのに、私の縄は白くて細い…見たこともない縄だった…
…さっきお美津ちゃんが言われていた「おまえは関わりねぇだから…」という男達の言葉が頭をよぎった…
…じゃあ目当ては私ってこと?
抑えられない恐怖が胃を締めつける。
「やめてけれ!許してけれ!縄、解いてけれ!」
気がつくと私は泣き叫んでいた。
次の瞬間、鳩尾に凄い衝撃を受け意識が跳んだ。
…気づくと口の中には苦くて酸っぱい塊が押し込まれていて、その塊を吐き出せないように口に布を咬まされるところだった。
…多分この布もお美津ちゃんの咬まされているような古手拭いなどではなくきっと特別なものなのだろう…
頬に食い込む布を噛みしめると口の中の塊から苦くて酸っぱい汁が滲み出してきて溢れる…すると不思議なことに気持ちが少しだけ落ち着いてきた。なんだか頭の中に立ち込めた霧が晴れてその向こうに何か大事なものがあるような感じ…とでも言えばいいか…
…しかしやっと纏まりかけた考えはいきなり顔の前に広げられた白い布によって中断させられた…
「小娘の分際で空恐ろしいわぃ。しっかり猿轡を咬ませて置けや。」
「おい。×××を早よぅよこせ!」
…何をよこせと言ったのか聞き取れなかった…しかし目の前に突き出された不思議な形の白い物の使い道は直ぐに判った。
「名主様を呪詛するような大罪人じゃ。」
「おとなしそうな顔して丑参りとは太いあまじゃのぉ。」
…丑参り?呪詛?一体何のこと?
私はとんでもない濡れ衣を着せられている…
「ううううっ!ううん!ううん!」
ありったけの力で身悶えして首を振り訴えた…が、口は自由にならない…
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