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言いながら違う方向を向いてしまった彼だけど、口を開けたまま固まっている私の顔を見られなくて逆によかった。
えっと、だからその…
ええっ!?アドレスううう?
こんなこと言われたこと一度もなかったから、脳が正常に働いてくれない。
なかなか再起動しない私を見かねてあゆちゃんが間に入ってくれた。
「あのさぁ、とりあえず~あなた誰?」
彼ははっとした顔をして、すっと背筋を伸ばした気がした。
「あっ、ごめん!
俺若林高校三年の塚本聖也。
君のこと去年からよくここで見かけてて…その、
友達になってくんない?」
早口で一気に話した後、答えを求める眼差しで凝視してくる。
うわっうわあ。
どどどどうしよう!
友達…って、そんな簡単になれるのかな?
えっ?もし友達になったとして、名前と学校しか知らない人に携帯番号やアドレスを教えてしまってもいいものなの?
頭のなかで葛藤していると、私の気持ちを知ってか知らずか、今度は莉子ちゃんが口を開いた。
「すみませんけど、姫乃がいいって言っても私が断ります。
初対面でアドレス教えて欲しいとか、怪しすぎるでしょ。」
それを聞いた彼はうっと言葉を詰まらせると、未だ私の前に出したまま握っていた携帯電話をポケットに強引に押し込んだ。
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