01 日常の変化

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あれから何度か放課後にいつものファーストフード店に行った。 その度に塚本さんが必ずいて話しかけてくれる。 莉子ちゃんが睨むような視線を向けるものだから、いつも一言二言になってしまうのだけれど。 その内容というのも「好きな食べ物は?」とか、「好きな歌手は?」とかで、出会う度に必ず何か質問をしてくる。 今日も… 「ねぇ姫乃ちゃん。 好きな映画ってある?」 「え、映画ですか?ええと…」 私と莉子ちゃんの座るテーブルに肘をついてしゃがむ塚本さんは、ニコニコと笑っている。 会話するのにも大分慣れてきたと自分では思う。 「あんたも懲りないわね。」 塚本さんに毒を吐く莉子ちゃんも、もう見慣れた光景になった。 「懲りないよ。 だから今日は邪魔しないでね?」 あれ?二人の視線の真ん中でバチバチと火花が散って見えるのは私だけだろうか? そしてどちらの言葉にも棘を感じる。 「でさ、好きな映画!何?」 ふいに私に視線を戻され、質問に答えていなかったことに気がついた。 「あ、そうでした。 えーっと、最近の映画でしたら『流れ星の欠片』がずこく感動でした。」 少し前にいつものメンバー三人で見に行った映画。主人公の女の子と、幼馴染みの男の子が流星群をきっかけにお互いを意識し始め、最終的に結ばれるという内容だった。 私は純愛ラブストーリーに弱い。 「俺もそれ見たよ! ってか姫乃ちゃんってイメージまんまだよね。」 ぷっと吹き出しながら言う塚本さんを軽く睨む。  
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