誤審

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「最後の球に何か不満はないのかね?」 あまりに想像を超越した彼の行動と言動に、 私は審判としてのタブーを犯してしまった。 ジャッジに自信がなかったことををみとめてしまったのだ。 ーーー自信もないのにストライクと言ったのか。 そう非難されても仕方のないことを私はやった。 「少しでもあれがボールだとは思わなかったのか」と。そう聞いてしまったのだ。 すると青年は、そのボロボロに汚れた顔を、青色のアンダーシャツでひと拭いして、 それでしばらくいろんなところをゴシゴシやったあと、 それでもやはり真っ赤に染まった、充血した目を真っすぐこちらにむけて、こんなことを言った。 「あそこがストライクゾーンになっていることを見抜けなかった僕の負けです。 何の文句もありません。」
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