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何万球という球を見送り、
そのたびにストライクかボールかと叫び、
努力も希望もすべてを載せたそれを、
ルールによる二つの要素に容赦なく分別をしてきて、
心を鬼にし、情を捨て作り上げてきた長方形のストライクゾーンという名の箱が、
この日の、この球の、この場面においてだけ、
歪んで見えた。曲がって見えた。
入った?外ずれた?外れた?
どっちだ。
どっちにも判断できる。が、どっちにも判断できない。
審判生活20年の混乱が、その身にいっぺんに降りかかったかのよう。
どっちが、どっちだか。
判断しかねた、
正しい選択を自分の中に見出だせぬまま、手を挙げてしまったのだ。
わあっ、と上がる歓声は、
まるでひしゃげたストライクゾーンが私を嘲笑うかのよう。
勝敗は決まった。お前の中途半端な判定は、一つのフェアを潰した、と。
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