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「これ、落ちてたわよ」
アイは俺に栞を渡す。
「あ、わりぃな」
アイから俺は栞を受け取る。
チラチラと泰蔵が不思議そうな顔で栞を見ている。
「……まだ持ってたのね」
アイは横にいる泰蔵に聞こえないくらい小さな声で呟いた。
まだ持っていた……か。
アイにとってはコレは何ともないものだったのかもしれないな。
キーンコーンカーン……
凄くナイスなタイミングでチャイムが鳴る。
それと同時にアイは無言で席に戻った。
暫くして教科担当の教師がやってきて事務的に授業を始めた。
俺は先程、アイが拾ってくれた栞を見つめる。
授業は上の空だ。
四つ葉のクローバーを押し花にして作った栞。
男の俺が持ってるのは不自然かもしれないがこれは俺の大切な宝物。
幼い頃アイが作ってくれた大切なもの。
俺のお守り……みたいなモン。
このお陰で俺は変われた。
今の俺になれた。
はたから見れば単なるゴミかもしれない。
けど俺にとっては掛け替えのない何物にも変えられない宝物なのだ。
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