灰色白髪の目覚め

31/63
1314人が本棚に入れています
本棚に追加
/2995ページ
「でも無理、絶対無理よ、貴方は何も解ってないの」 またこれだ、解ってないって? 本当に苛々する。 「何が解ってないってんだよ!」 「………ベルナッド家の力、こんな真似をした貴方を、フリップが許す筈は無いわ。確実に殺される」 「………な、んだと?」 「……それは避けられない運命、だから私は、貴方の気持ちに応えられ……」 ひ、ヒハハッ! なんだ、そんな事を心配してたのか。 「………ゲ、ゲハ、ゲハハハッ」 「えっ………ザ、ザケン?」 俺様は彼女に嫌われてない事だけが嬉しくて、自然と笑いが込み上げてきた。 ………… 安心しろ、セーラ。 この俺を誰だと思ってる。 ザケン様だぞ? 100人もの部下を持つ、スラムの英雄だぞ? 「ゲハハハッ、そんな事、何も心配しなくて良いんだ。こんな家の奴等に俺は負けたりしねぇよ」 「………い、いえ、無理、無理よ!」 「無理じゃねぇ!!」 「ひっ!?」 俺様は思いっきり怒鳴ると、流石のセーラもビクッと驚いた。 「来い!俺様の力、俺様の仲間を見せてやる!」 「ザ、ザケン!?」 ………… そしてこの日、俺様は半ば無理矢理にセーラを拐い、アジトへと走った。 だが、彼女の言っていた事は、本当だったようだ。 俺様は……… 俺様は、何も解ってなかったんだな。 今更、謝っても仕方無いが、そう言わざるを得ない。 ベルナッド家の力は、俺の想像を遥かに超えていたんだ。
/2995ページ

最初のコメントを投稿しよう!