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メナス王国~イシュタール都。
……………
「カール様、アーゼル連合より使者が参られました」
「……直ぐにお通しせよ」
「ハッ!」
新たに建造された王座の間で、この国の王であるカール・アイスマンは、先程到着した連合の使者と面会に至る。
「……………」
だが使者が来るまでの間、飾り気の無い部屋の中で、彼は人知れず深い溜め息をついた。
(………ふぅ、まさかこの様な事態になるとはな?……野心がないと言えば嘘になるが、かといって放置も出来ぬ)
アルカディア大陸……いや、セクリウス全土の危機。
ニルヴァに敗れてからというもの、慌てて富国強兵を掲げて内政に力を入れていたら、それどころの話ではなくなった。
形上の同盟、シルビア帝国は崩壊し、ニルヴァも半壊。
アルカディア大陸は混沌な世界と化しており、最近ではこのメナスに助けを求めて海を渡る者まで増えている。
そのお陰か、国の人口は段々と増え始め、中には優秀な人材さえも居た。
(あれほど力の差があり、ナティルに因って操られた我々が、今度は逆に助けを求められている、何とも皮肉な話だ)
島国で人口が少なかったという点だけで、まさかここまで優位な状況になるとは。
勿論カールは、何故テラ軍なるものが自分達を襲わないのか、理解していない。
だが、現状ではルノーを除き、最も安定しているのはメナス王国に他ならない。
(やろうと思えば、これを機にナティルを出し抜けるかも知れぬ………)
「…………フッ」
然し黒い考えが浮かんでから、カールは自嘲気味に笑って頭を振る。
(……何をバカな、私もどうかしてる)
今は、それどころではない。
銀髪の若き英雄は、決して大局を見誤る愚鈍な王ではなかった。
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