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……………
リックはミルフィが見えない場所まで来ると、少し顔を赤らめて足を止めた。
「ご、ごめん、じ、実はさ?」
「も、もぅ、一体なんなの!?」
二人きりになってしまったせいで、ラファリアも少し動揺している様子。
(………へへっ)
そんな彼女を見て、リックは心の中で細く微笑んだ。
勿論、そうなるだろうと彼は確信してここに連れ込んでいる。
「ほら、これをラファリアさんに買ってきたんだよ」
「…………えっ」
リックはわざとらしく照れながら、手のひらサイズのブローチを手渡した。
「綺麗だろ?………ミ、ミルフィさんの分は無いからさ……な、内緒ね?」
そしてわざと、ミルフィの名前を出して彼女を特別扱いする。
「こ、これ………を?」
ブローチは花柄で、薄いブルーの色合いをしていた。
確かに可愛らしい物で、ラファリアにも良く似合いそうな感じの物。
「………うん、ラファリアさんの為に」
「…………わ、私の為?」
「あはは、そ、そうだよ。だから、もう許してくれない?……ね?」
明らかに好意的な、君が好きなんだという雰囲気を醸し出す。
「………う、うん………あ、ありがと」
……………
みる人がみれば、リックの芝居は直ぐに解るだろう。
だが彼女には、決して見抜けない。
何故ならラファリアは、余りにこういう普通の好意に慣れてなかった。
「こ、今度だけだからね?あ、後、ミルフィには内緒だからね!」
「………クスッ……勿論だよ」
リックは軽く鼻で笑ったが、そこは彼女には見せなかった。
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