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…………
ミルフィの元に戻った二人は、彼女に悟られない様に距離を置く。
「あ、あははっ、お、お待たせ、コイツには叱っておいたから」
「…………はい」
顔を赤らめながら、遅れた弁明をするラファリアに対し、ミルフィは静かに返事をした。
そして彼女とリックを見ながら、内心思う。
(お待たせ……なんて、明らかに可笑しい台詞ですの、ラファリアさんはご自身の立場を強く思っている割りに、頭が混乱するとこんな感じになりますわ)
幾らミルフィが世間に疎くても、彼女よりは沢山の人と出会っている。
毎度毎度、挙動不審な態度を取られれば、流石に彼女でも気が付いた。
(………信じられませんが……恐らく、彼女は彼を………)
ラスベルの事を引き合いに出し、自分を責め立てたラファリア。
同じ男を好きになり、醜い争いをしてこうなった筈だった。
だが今は、全くそうは思わない。
彼女が最近になって、自分に対して妙に優しくなった事。
自分にリックが絡むと、やけに怒る事。
今回みたいに、挙動不審になる事。
これらの態度から、導き出された彼女の答え。
(……………)
ミルフィが複雑な気持ちで見ていると、ラファリアが声を掛けてきた。
「………ほら、ミルフィ、行くよ?」
「…………あ、はい、解りましたの」
(………だとしても、私が自由に慣れる訳じゃありませんわ)
心境の変化はどうであれ、彼女が自分を解放する事は無い。
ミルフィは二人の後をてくてくと歩きながら、彼女と違って今も、あの男の事を考えていた。
(………ラスベル…………)
彼に逢いたい。
この三ヶ月の間、彼女は片時も彼の事を忘れた日はなかった。
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