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……………
「………そのブローチ、どうなされたの?」
「………えっ?」
ルノーの中央広場に向かう途中、唐突にミルフィがラファリアに尋ねた。
「先程までなかったですよね?」
「……え、あっ、こ、これ?」
その質問にラファリアは、あからさまに動揺した。
(…………解りやすい方)
勿論、ミルフィの方はわざとだ。
「か、可愛いでしょ、こないだ買ったのよ!」
「………そうなんですの、私も欲しかったですわ」
「あ、うっ………ち、調子に乗らないでよね!何でアンタの分まで買わなきゃいけないのよ!」
(……………間違いないですわ)
「………そうですわね、捕らわれの身で出過ぎた真似を、ごめんなさいの」
ミルフィが仰々しく足を止めて頭を下げると、ラファリアは何故か罪悪感に駈られた。
「あ、い、いや、その……」
「あまりに素敵だったので、つい」
「ふ、ふん!仕方無いわね!こ、今度見掛けたら、アンタの分も買ってあげるわよ!」
ラファリアは怒った振りをしながら、顔を合わせない様にソッポを向く。
「………ありがとうですの」
(……………)
この態度で、ミルフィは確信が持てた。
ラファリアは自分を悪魔だ、悪魔だと追い詰めてはいるが、本音の所はまだ染まっていないという事。
状況により変化したとしても、彼女は根っからの悪人ではなかった。
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