灰色白髪の目覚め

3/63
前へ
/2995ページ
次へ
…………… 「………うっ………」 古城の壁際で、その重病人が目を開けた。 彼は男性で、白髪の痩せた身体をしている。 この日は久しぶりに天気が良く、眩しい太陽の日射しが入ってきた。 つい最近までは、目を開けるのも大変だったが、お陰様で随分と調子が良いように感じる。 「…………どう?……身体の方は」 すると、直ぐに男の視界に美しい女性の姿が映った。 彼女は、この三ヶ月もの間、彼を献身的な介護で支えた女性である。 「………お陰で頗る調子が良い」 「…………そう………良かったわ」 然し不思議な事に、漸く元気になった彼に対し、彼女は然して喜びを顕にしなかった。 「……………」 男は複雑な気持ちで、寝たまま女性を見つめるが、あえて彼女は目線を合わせようとはしない。 「朝ごはんは出来てるわ、ロクな物じゃないけど、我慢してね」 「……………」 女性の声を聞いて、男は黙ったまま身体を起こした。 まだ心臓の辺りが痛むが、殆ど完治している。 だが今はそれより、以前から疑問に思っていた事が気になった。
/2995ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1315人が本棚に入れています
本棚に追加