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……………
「………うっ………」
古城の壁際で、その重病人が目を開けた。
彼は男性で、白髪の痩せた身体をしている。
この日は久しぶりに天気が良く、眩しい太陽の日射しが入ってきた。
つい最近までは、目を開けるのも大変だったが、お陰様で随分と調子が良いように感じる。
「…………どう?……身体の方は」
すると、直ぐに男の視界に美しい女性の姿が映った。
彼女は、この三ヶ月もの間、彼を献身的な介護で支えた女性である。
「………お陰で頗る調子が良い」
「…………そう………良かったわ」
然し不思議な事に、漸く元気になった彼に対し、彼女は然して喜びを顕にしなかった。
「……………」
男は複雑な気持ちで、寝たまま女性を見つめるが、あえて彼女は目線を合わせようとはしない。
「朝ごはんは出来てるわ、ロクな物じゃないけど、我慢してね」
「……………」
女性の声を聞いて、男は黙ったまま身体を起こした。
まだ心臓の辺りが痛むが、殆ど完治している。
だが今はそれより、以前から疑問に思っていた事が気になった。
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