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……………
彼女が、一頻り泣いた後。
20年前と変わらぬ美しさを保つセーラに、ザケンは髪を撫でながら目を閉じた。
「………本当に済まなかった、あの時は、俺に父親の資格なんかないと思ってたからよ」
「……………」
「お前は決して俺を許さないと思ったし、俺自身も許せなかった。俺は、お前にこれ以上の不幸を背負わしたくなくて………」
「………だから逃げた………とでも?」
「……………」
二人はれっきとした大人だが、今はまるで若い恋人同士の様に、自然と彼女が寄り添う形になっている。
然しながら、二人の間に渦巻く深い想いは、ぐるぐると荒波を立てて心をかき乱していた。
「………あぁ、そうだ。俺様には、とても父親になる資格はねぇ、産まれてきた子の為にも、穢れた俺が居ちゃいけないと思っ……」
パンッ!
先程よりも更に強烈に。
乾いた音が響き、再び涙を流した彼女の平手打ちが、ザケンの頬を捉える。
「…………セーラ………」
「…………わかってない」
名を呟くザケンの前で、セーラの瞳は真っ赤な炎を灯して燃え盛っていた。
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