灰色白髪の目覚め

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少年時代は良く覚えていない。 スラム街はルノーにあるが、その場所は完全に隔離されている。 位置で言えば一番右角辺り、高い壁で囲われていた。 何でも、孤児院にすら入れないゴミの子供や、容姿が余りにも酷い子供だけが、ここに捨てられるらしい。 つまり、大人から人としての価値がないと判断された集まりって訳だ。 酷い話だが、俺様はそれが当たり前だと思っていた。 さて、スラムは最下層の階級が住む所で、その日を生きるのに必死な世界。 幾ら他の人間より飲食物が少なくても済むとはいえ、何も食べなければ俺様だって死ぬ。 だから奪い、盗み、壊し、出し抜く。 まともな倫理観等を教わってない俺様は、とにかく人様から物を頂く事だけを考えて生きた。 能力開花は想いの強さだが、俺様は産まれた時からそれが可能。 よって、例え身形は貧相で年端もいかずとも、直ぐに俺様はスラム街の頂点に立った。 自分の容姿と白髪により、仲間からは悪魔と呼ばれ畏怖の対象として敬われる。 人に触れるだけで、相手を悶絶させる力を持ち、ナイフで抉られても瞬時に治癒出来る俺様は、正に悪魔的な英雄だった。 俺様に媚びる奴等に奪った物を恵んでやると、ソイツは額を地面に擦りつけて喜ぶ。 ムカつくライバルグループを倒してくれとせがまれ、俺様一人で半殺しにすると、皆は称えてくれた。 生きていく上で、人々に賞賛されるのは気分が良い。 俺様は、ただそれだけが楽しかった。 そしてこの頃、俺様は18歳くらいになっていて、スラムの悪ガキ凡そ100人を束ねる程の男になった。
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