灰色白髪の目覚め

17/63
前へ
/2995ページ
次へ
後で聞いた話では、セーラは普通の家の娘だったそうだ。 然し余りにも美しい容姿と、その魅惑の身体は街中の噂になり、ベルナッド家のフリップに目を付けられる事になる。 彼女自身は奴隷でも何でも無いが、フリップは多額の金と権力を行使して、彼女を買収した。 それだけじゃない。 何でもセーラの周りにいた男達は、その全員が離されるか闇に葬られたとか。 この時、フリップは既に何人もの美女を持っていたが、彼女もその一人に選ばれたという事だ。 確かにベルナッド家の女になれば、若い間は何一つ不自由なく暮らせるだろう。 だがそれは、あくまでも若い時だけだ。 老いた美人等、あの豚は容赦しない。 セーラはどう思っていたかは知らないが、少なくともそれは事実だった。 …………… 彼女は全てを諦め、無表情で一団の中心を進んでいた。 俺様はじっと彼女を見詰め、殺気立つ程の視線を浴びせる。 「……………」 すると、何万人もの見学者がいる中で、奇跡的な事が起こった。 ふいに彼女が俺様を見詰め、そして俺様と目が合ったのだ。 「……………」 ゲハハッ、待ってろよ。 お前は、俺様のモンだからな? 何処にも行くんじゃねぇよ。 ………… セーラは何も言わず、怯えず、ただ俺様を見ていた。 今にして思えば、彼女がどうして俺様から目を離さなかったのか、不思議でならない。 まぁ良い、そんな理由はどうでもいい。 この時に初めて、俺様とセーラは出会った事になる。
/2995ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1315人が本棚に入れています
本棚に追加