1315人が本棚に入れています
本棚に追加
俺様はアジトに戻ると、仲間に嬉々としてセーラの事を報告した。
「ちょっと欲しい女が出来た。今夜にでも拐いにいくぜ」
仲間達は、まるで自分の事の様に喜んでくれた。
俺様は、それが何より嬉しかった。
コイツらは、みてくれは悪くとも、本当に気の良い奴等なんだ。
能力も無く、無様で、醜くても、俺様にとっては家族と等しい。
一人殺られて、今は99人の子分だが、俺様はコイツ等と生きていきたいと思っていた。
「ボス、俺達も手伝いまさぁ!」
「いや、今回は俺様だけでいい。お前等は新しい家を襲っておけ」
「大丈夫ですかい?」
「あぁ、問題ねぇよ。俺様だぜ?」
俺が得意気に腰に手をあてると、仲間達はどっと笑った。
「ガハハッ、ちげえねぇ!」
「ザケン万歳!世の中万歳!」
「ゲハハハハッ!」
…………
夜が待ち遠しい。
こんなにもワクワクするのは、生まれて初めてだ。
外の世界に出て良かった。
俺様達は、この世界を牛耳るんだ。
若さと無学の俺様は、本気でそんな事を考えていた。
愚かで、滑稽で、何と世間知らずな。
スラムで天下を取った程度で、この世に一体どれだけの人間が居たと思うのか。
本当に、俺様はバカだった。
最初のコメントを投稿しよう!