灰色白髪の目覚め

21/63
前へ
/2995ページ
次へ
「………下がりなさい、下郎」 ………げ、げろう? 「私に触れて良いのは、私を幸せにしてくれる男だけよ。獣に用はないの」 「……なっ……んだと?」 俺様が雷に撃たれた様に硬直すると、彼女はクスッと鼻で笑った。 美しい黒髪をかきあげ、平民とは思えないほど優雅に。 上品とは違う、女性としての気品がとても高かったんだ。 「フフッ、野良犬が私をどうにか出来ると思って?」 ………ビキッ それを聴いた途端、俺様の心は激しく燃え上がり、全身の血管がはち切れんばかりに膨張した。 「………テッンメェ!!」 怒りに任せて死神の様な面をし、今直ぐにでも殺したくなる。 「……………」 だがセーラは、それでも薄笑いをしてるだけで、然して怯えた様子には見えなかった。 「この俺様が野良犬だと!?良く言うぜ、お前こそ金持ちに売られたんだろうが!?」 「………あら、良く知ってるわね」 「ゲハハッ、そんな道具みたいなお前が、俺様を批難出来るのかよ!」 「……………」 「野良犬でも、俺様は自由だ!それに比べてお前は何だ!モノの癖に大層な御託を並べんじゃねぇよ!」 「……………」 「良いか、この世の全ては俺様の為に在るんだ!お前も俺様のモンだ!だから生意気言うんじゃねぇ!俺様に黙って付いてくりゃ良いんだ!」 「……………」 「わかったか!わかったかゴラァ!」 俺様はハァハァと呼吸を乱し、御山の大将の持論を息巻いて展開した。 さぁ、ビビれ。 ビビって、泣いて喚いて、俺様の女になれ! 俺様は本気でそんな事を思っていた。 彼女の気持ちも考えず、ガキの癖に随分と酷い事を言ったもんだ。
/2995ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1315人が本棚に入れています
本棚に追加