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「………下がりなさい、下郎」
………げ、げろう?
「私に触れて良いのは、私を幸せにしてくれる男だけよ。獣に用はないの」
「……なっ……んだと?」
俺様が雷に撃たれた様に硬直すると、彼女はクスッと鼻で笑った。
美しい黒髪をかきあげ、平民とは思えないほど優雅に。
上品とは違う、女性としての気品がとても高かったんだ。
「フフッ、野良犬が私をどうにか出来ると思って?」
………ビキッ
それを聴いた途端、俺様の心は激しく燃え上がり、全身の血管がはち切れんばかりに膨張した。
「………テッンメェ!!」
怒りに任せて死神の様な面をし、今直ぐにでも殺したくなる。
「……………」
だがセーラは、それでも薄笑いをしてるだけで、然して怯えた様子には見えなかった。
「この俺様が野良犬だと!?良く言うぜ、お前こそ金持ちに売られたんだろうが!?」
「………あら、良く知ってるわね」
「ゲハハッ、そんな道具みたいなお前が、俺様を批難出来るのかよ!」
「……………」
「野良犬でも、俺様は自由だ!それに比べてお前は何だ!モノの癖に大層な御託を並べんじゃねぇよ!」
「……………」
「良いか、この世の全ては俺様の為に在るんだ!お前も俺様のモンだ!だから生意気言うんじゃねぇ!俺様に黙って付いてくりゃ良いんだ!」
「……………」
「わかったか!わかったかゴラァ!」
俺様はハァハァと呼吸を乱し、御山の大将の持論を息巻いて展開した。
さぁ、ビビれ。
ビビって、泣いて喚いて、俺様の女になれ!
俺様は本気でそんな事を思っていた。
彼女の気持ちも考えず、ガキの癖に随分と酷い事を言ったもんだ。
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