灰色白髪の目覚め

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「あ………なた?」 そしてセーラは本当に驚いた顔をして、俺様を見た。 「………俺様のモンだ、俺様の………」 まるで呪文の様に、そればかりを繰り返す。 そして気が付けば。 生きてきて、感じた事のない感触が、俺様の頬を伝った。 それは涙。 俺様は何故か、生まれて初めて涙というものを流していた。 「セ、セーラ、俺様のモン、お前、俺様のモン………」 「……………」 子供みたいに、俺様は泣きべそをかいて彼女の身体の温もりを感じていた。 それはとても心地よくて。 性行為なんかより、ずっと尊いモノに思えた。 「…………ザ………ケン」 「!?」 彼女は俺様の名前を覚えていて、少しだけ戸惑いながら、俺様の白髪を撫でてくれた。 ……………… 嬉しかった。 ただほんの少し、触れただけの事なのに。 何だというんだ。 痛みは消え、代わりに愛しい想いが全身を駆け巡る。 愛しい? そ………そうか。 これが、人を愛するという感情なのか。 なんて………… なんて、人間は素晴らしいのだろう。 ……………… 「………セ、セーラ……」 何故か、彼女の名前を呼んだ。 俺様は、愛という気持ちに、ここで初めて気づく事が出来たと思う。
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