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………………
それから少しの間、俺達は無言のまま寄り添っていた。
セーラを欲しいと思う気持ちは、物が欲しいという気持ちとは違う。
これが惚れるという事、それは皮肉にも強姦した彼女から教えられた。
「ザケン………とかいったわね」
互いに落ち着きをみせた頃、セーラが感情の籠らない声で俺様に話し掛ける。
「…………あぁ」
「貴方は酷い人、本当は殺してやりたいくらいに憎い」
「……………」
「………でも、ごめんなさい。貴方は獣ではなかったわ。熱い涙を流せる人間よ」
「…………すまねぇ、そう言ってくれるのは嬉しいが、俺様には涙の理由が解らないんだ。ただ……」
俺様はセーラの肩を優しく掴む。
「ただ、お前を泣かせた事に、酷い痛みを感じた。それは嘘じゃない、俺様はお前が………」
「………………」
…………
別段、セーラは抵抗しなかった。
俺様がキスすると、彼女は無表情のままそれを受け入れた。
「……貴方は愛を知らないのね。私も恋に関しては未熟だけど、少なくとも初めて抱かれた相手が、獣でなかったのは助かったわ」
………初めて?
そうか、そうだったのか。
「……………」
俺様が視線を落とすと、彼女はここで初めて笑って、そして悲しげな顔をした。
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