灰色白髪の目覚め

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「貴方はスラム出身だったわよね?ううん、決してバカにしてる訳じゃないの。その白髪や長身、線の細さから普通じゃないって事くらい解るわ」 「……………」 俺様は黙って頷いた。 さっきと違って、不思議と嫌な感じはしなかったからだ。 「私はね?貴方の言うように、確かにここに売られたわ。でもそれを悔やんだりしていない、だって両親は大金を得られて大喜びだし、昔から私も華やかな生活に憧れを抱いていたもの」 「……………」 「自由なんて、この国、この街では絶対に無理なの。だったら少しでも贅沢したいし、少しでも人より上に立ちたいわ。惨めな人生なんか送りたくない、滑稽だけどそれが一番よ」 セーラは自嘲気味に笑って、俺様の手を握る。 嬉しい筈なのに、今は何だか切ない気持ちになっていた。 「セーラ………お前……」 俺様が口を開こうとすると、彼女は黙って頭を左右に振る。 「………ザケン、多分貴方は根っからの悪人じゃないわ。自由でとても人間らしくて、私の様に全てを諦めたりもしていない」 「……………」 「あはっ、憎くて仕方ないけど、初めて抱かれたのが貴方で良かったわ。あの豚の相手をする前に、せめてもの抵抗が出来て嬉しいのかも知れない」 「………お前……何で泣いてるんだ?」 セーラは儚い笑顔のまま、ポロポロと涙を流していた。 俺様は、それがとても嫌で、なんだか怒りが込み上げてくる。 勿論、彼女に対してじゃない。 この世界、この国、この街の全てにだ。
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