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『ところでさ、 昼間紗枝が言ってた 理想と現実の違いって何?』 しばし談笑した後に ポツリと聞かれたその質問に 私は息を飲んだ。 「…それは…」 戸惑う私に気付いたのか 電話の向こうの聖は 少し慌てた様子。 『あ、話したくなかったら 話さなくていーよ。 俺も人には言いたくない事も たくさんあるからさ』 けれどそんな彼の言葉が 無性に心に沁みて来た。 彼との急接近で、 和んでいたはずの心が 現実を思い出して痛くなる。 そして私は、 堪えきれない痛みを思わず 吐き出してしまった。 「夫が浮気してるかも…」 けれど自分の口から 出てしまった言葉に ハッとする。 「あっ…」 どうやって誤魔化そうか 必死に焦っていた時、 ポツリと返って来た声。
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