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狙撃専門の森下(もりした)教官は枯(か)れ枝のように細い身体(からだ)をしている。自分自身が鋼鉄の銃身のようだ。片メガネをかけているのは、利き目の右だけ酷使したせいだといわれていた。
「72式をおきなさい」
タツオは狙撃銃をブランケットのうえにそっともどした。森下教官がブーツの音を立てて近づいてきた。頭を下げて、タツオの右肩のにおいをかいだ。
「いいだろう。逆島(さかしま)くんだったな、今きみのクラスの担任を呼ぶ。ここで待機していなさい。すぐに実況検分と捜査を始める」
そういうと森下教官は人を呼びにいった。誰もいない射撃訓練場でサイコが声を殺していった。
「あの先生、狙撃の名手なんでしょう。ウルルクの前哨戦で、一日に21人の敵を倒したってきいたよ。あの人が犯人なんじゃないかな。最初に現場にあらわれるなんてタイミングがよくて怪しすぎるよ」
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